CT125の新型である23YM・ハンターカブが発表されたので、気になる従来の20YM・ハンターカブとの違いをまとめてみる。
CT125の20YMとの大きな違いは、排ガス規制をクリアするためにロングストローク化した新型エンジンを搭載している事。
それでなくても最高出力が低い小型横型エンジンなのでセールス上、スペックダウンは許されず見かけ上のスペックは僅かながらも向上している。
主なエンジンの違い
ロングストローク化による出力の低下を避けるため、圧縮比を大幅に上げている圧縮比旧:9.3:1新:10.1:1最高出力旧:6.5kW[8.8ps]/7,000rpm新:6.7kW[9.1ps]/6,250rpm最大トルク旧:11Nm[1.1kgfm]4,500rpm新:11Nm[1.1kgfm]4,750rpm排気量旧:124㏄新:123㏄最高出力や出力特性に関してはマフラーやエアフィルターなどで容易に変わってしまうので気にする必要もない。
■アイドルエアコントロールバルブをスロットルボディと一体化
新型エンジンでは、アイドルエアコントロールバルブがスロットルボディと一体化して小型化とコストダウンを達成した。
20~22年モデルではアイドルエアコントロールバルブはスロットルボディに接続される独立した部品で、日本での部品価格は5,853円と手の中に納まるサイズながら高価なものだったのでコストダウンに大きく貢献している。
オイルフィルターの採用理由ロングストローク化によりピストン移動速度が高速になるので、油膜切れの不安があるが、ピストンオイルジェット方式を採用してピストンにオイルを吹き付けて冷却と潤滑効率を上げている。ピストンオイルジェットはジェットと名がつく事から判るが、ジェットの様な勢いで噴射させるには高い油圧を必要とする為、オイルの流路は非常に細くなる。この為、オイルにスラッジや金属粉などのゴミが混ざっていると目詰まりの原因となり、エンジンには致命傷となるため、オイルフィルターの採用は必須となった。
オイルフィルター搭載をセールスポイントとして挙げていない理由。
また、細いオイル流路はオイル粘度が高いと流れ難くなるので100%鉱物油のオイルでは寒冷時には問題になる可能性がある為、新型エンジンが最初に搭載された21YMのグロム発表前に標準オイルであるHONDAのエンジンオイルG1が全面改良され、低温時の粘度が10Wから5Wへと低く下げられた理由の一つでもある。
1980~90年代のような性能向上を目指したモデルチェンジと違って、電動化に移行が進む現在ではそれまでの繋ぎとして年々強化される排ガス規制と環境性能に対応する為のモデルチェンジでありその結果、新型エンジンはデリケートになったと言える。
旧型のエンジンでは、昔ながらのオイルストレーナーだけで問題がなく、その信頼性とタフさは長い歴史と実績が証明している事と運用・整備・パーツといったノウハウも蓄積されており、オイルフィルターが無いからと言って気にする必要はない。
更につけ加えるなら新型エンジンは旧型と同じくオイルストレーナーも搭載されていることだ、要するにオイルフィルターだけ交換していれば済む訳じゃないという事だ。
1次/2次減速比の変更
トランスミッションの各ギヤの変速比は変わらず、1次/2次減速比は変更され僅かながら高速化した事によりメーター上では100㎞を超える(グロムでは102㎞)。1次/2次総減速比旧:9.329新:9.284エンジンの軽量化新型エンジンではロングストローク化した事によってシリンダー周りが細くなり小型化した事と、クランクシャフトも軽量になり、旧型より約2Kgも軽量化している。23YM・ハンターカブの装備重量が2Kg 軽量化したのはこの新型エンジンの軽量化によることが大きい。装備重量旧:120kg新:118kg※出典:ホンダ 3代目グロム開発者インタビュー【エンジン編】「5速化でもっと楽しく、軽量化で走りも燃費も良く!」
車体の変更箇所
■アンダーフレームパイプに補強を追加
旧型と比較した際、最もわかりやすい変更箇所で、剛性の確保と旧型より低くエンジン中央寄りに配置されたインジェクションの保護を兼ねる。
20~22’モデルには搭載不可
■サイドスタンドの地面設置部分の形状変更旧型のパイプを押しつぶしただけの地面接地部分から広めの板を溶接でつけた構造となった。
■センタースタンドの補強部分の形状変更
一枚板の補強からL字のアングル材で片面には緩くアールが付いた物に強化された。
■リアキャリア左側にオプション搭載用のねじ穴を追加(日本仕様のみ)
純正サイドケース等を搭載するためのステーを固定するねじ穴が追加されている
■メーターステーの変更
純正オプションのフロントキャリアを(純正ウィンドシールドのマウントも兼ねる)追加するにあたり、メーターステーはフロントキャリアの固定用ステーも兼ねることになり、メーターステーが大きく変わった。
また、固定用ボルトも変更された為、旧型に流用するにはトップブリッジも変更する必要がある。
61350-K2E-J10
■メーターステー固定用ボルトの変更
旧型6x14 新型8x14
■トップブリッジ変更
純正オプションにフロントキャリアとウインドシールドを追加するにあたってメーターステーの固定を強化するためにステー固定用ボルトのネジ穴が旧型6㎜から新型では8㎜に変更された。
■リア側面反射板の廃止(日本仕様のみ)
■キックペダルの形状変更
旧型では、派手に車体からはみ出てる見た目や、人によっては踵が引っ掛かったりして不評だったキックペダルは形状が変更された。
旧:28300-K2E-T00新:28300-K2E-J10 ※流用不可
■サスペンションユニットにプリロードアジャスタを搭載
プリロードを5段階にセッティング可能になった。
■シフトペダル形状変更
エンジンの変更に伴い従来の形状ではジェネレーターカバーに干渉してしまう為、エンジンに合わせて形状が変更された。
旧:24701-K2E-T00
新:24701-K2E-J10 ※流用不可
■ステップバー固定部分変更
新型エンジン用に固定部分が変更されているだけで、それ以外は変わらずステップも同じものが採用されている。
23年モデルのタイ仕様
■キャニスターの廃止
23年モデルのタイ仕様では、キャニスター(燃料蒸発ガス排出抑制装置)が無くなった。
燃料タンク内などから蒸発したガソリン蒸気を、外部に排出しないようにするためのシステムだが、アジア圏では小排気量二輪車の燃料蒸発ガスに対する規制がまだ緩い事もあってかバッサリと切り捨てられた。
まるごと無くなったキャニスターとその関連部品 |
図中の2番のキャニスターコンプは日本での部品価格は、¥3,179、図中10番のハ゛ルフ゛,ハ゜ーシ゛コントロールにおいては¥4,928と車両性能には全く関係がない割りに高価な部品で、これらを無くす事によるコストダウンは非常に大きい。
また、このキャニスターはキャニスター本体だけで少量版の缶コーヒー並みのサイズがあり、それに関するフレームのキャニスター固定用ステーとパイプ等の周辺部品が消える事による軽量化も大きい。
ボディ・左側メインフレームカバーの一部デザイン(形状)変更。
今回のモデルチェンジで唯一やっちまった感がある部分が左側メインフレームカバーの一部デザイン(形状)変更だ。
ヘッドライトユニットは、変更はない。
部品番号は変わらず
33110-K0F-T02
その他
DLCコネクタの形状変更
OBD2の接続など、車両診断に使われるDLCコネクタ(旧称:サービスチェックカプラ)が二輪国内三次規制(平成28年)に伴うOBD対応によりISO準拠となり、赤色4Pカプラから赤色6Pカプラに形状が変更された。
これによりOBD2アダプタを接続する場合、キタコ等から販売されている従来のOBD2アダプタや電源取り出しアダプタ等は利用できなくなっているので購入には新型・初期型のどちらに対応した製品か確認が必要。
チェンジ検出スイッチの変更
初期型では接点がニュートラルの一点だけで、ニュートラル以外の検出ができなかったが新型では4速全ての接点が付いてカプラまでしっかりと装備されたものに変更されているのでシフトインジケータ―を導入する場合にチェンジ検出スイッチを別途用意する必要が無くなった。
初期型CT125のチェンジ検出スイッチ(コンタクトASSY)
23年モデル 35759-K2E-T11 コンタクトASSY.,チエンジスイツチ ・・・・ ¥5,900
従来のHONDA純正部品 スイツチASSY,チエンジ・・・¥6,655
キルスイッチの廃止
利用頻度は個人によって異なるが、ハンドル右側のアクセントにもなっていたがバッサリと削除された。
タイ仕様ではキルスイッチは継続して採用されているが単純にオミットされたわけではなく丁寧にも日本仕様とは配線が異なる為、右ハンドルスイッチ交換での移植は不可能。