CT125の新型である23YM・ハンターカブ(JA65)が発表されたので、気になる従来の20YM・ハンターカブ(JA55)との違いをまとめた。
目次:
JA55とJA65の大きな違いは、排ガス規制をクリアするためにロングストローク化した新型エンジンを搭載している事で、それ以外は一部改良とコロナやロシア・ウクライナ戦争等の影響で資材や燃料の高騰が続き、コストダウンがメインとなる。
2024年には物価高の他、為替レートが大きく変動、急激な円安とタイバーツが上昇、排ガス規制対策と一部変更し、2025モデルとして日本での販売価格は3.3万円アップとなる。
CT125専用の部品を探す方が大変なくらいエンジンは共用されている。
その結果、従来の125㏄エンジンの感覚で大胆な排気量UP等のチューニングは耐久性的に厳しい。
シリンダーヘッド
及びシリンダーは鋳型が共通で排気量に合わせて加工。
これにより110㏄と同様のサイズで125㏄化を実現している。
この110㏄ベースにする事で使用する部品も安価な物を流用できる。
例として、JA65のセルモーターは、タイ仕様のスーパーカブ(110㏄)のセルモーターが使われているが、JA55に採用されているミツバ製のセルモーターとは価格も構造も著しく異なる。
JA55=31200-KPW-901.単価¥28300
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
JA65=31210-K1M-T01.単価¥16800
これが排気量に見合った物だったのかは不明だが、コストダウンに大きく貢献するのは確かだ。
JA65のクロスカブ110㏄と部品番号が共通のパーツ
※部品番号が違っても仕様は同じ(製造元の違い)や色や素材などの仕上げが違う部品などは部品番号は記載していない。
1 シリンダーヘッドとシリンダーは鋳型が共通
11 17119-K26-G00 インシユレーター,インテークパイプ
14 37750-K1A-N01 センサーASSY.,オイルテンプレチヤー(パナソニツク)
17 90443-GGN-J00 ワツシヤーA,シーリング 7MM
19 91304-K1A-N01 Oリング 6.3X2.5
21 93404-06012-00 ボルトワツシヤー 6X12
23 96001-06016-00 ボルト,フランジ 6X16
24 96001-06020-00 ボルト,フランジ 6X20
1 14321-K1M-T00 スプロケツト,カム(32T)
3 14500-K1M-T00 アームCOMP.,カムチエンテンシヨナー
5 14515-K1M-T00 プレート,テンシヨナーアームセツテイング
7 14541-GB4-681 スプリング,カムチエンテンシヨナー ※JA55
8 14550-K1M-T01 ロツドCOMP.,テンシヨナープツシユ
9 14566-086-030 ヘツド,カムチエンテンシヨナープツシユロツト
18 90603-K1M-T00 クリツプ 12MM
7 13115-GN5-910 クリツプ,ピストンピン 13MM
14 22825-KWW-740 スプリング,カムプレートサイド
16 22846-K1M-T00 ボルト,クラツチアジヤステイング
19 22860-K1M-T00 リテーナーCOMP.,ボール
24 91202-KRS-971 オイルシール 13.8X24X5
25 91302-K0G-911 Oリング 39.8X2.2(アライ)
26 91303-001-010 Oリング 8MM ※JA55
28 94030-08000 ナツト,6カク 8MM ※JA55
29 94301-08140 ノツクピン 8X14
30 96001-06018-00 ボルト,フランジ 6X18
31 96001-06035-00 ボルト,フランジ 6X35
7 22641-KPH-900 スプリング,プライマリークラツチ
9 22643-KPH-900 スプリング,サイドフリクシヨン
10 22644-K90-V01 プレート,クラツチサイド(F.C.C.)
11 22660-K1M-T01 アウターASSY.,プライマリークラツチ
12 22804-GB2-000 ラバー,クラツチダンパー
22804-KPH-880ラバー,クラツチダンパー
6 22201-K1M-T01 デイスク,クラツチフリクシヨン
7 22321-KE8-000 プレート,クラツチ
9 22361-K1M-T01 プレート,クラツチリフター
12 90204-KYJ-900 ナツト,6カク 14MM
14 90432-KPT-A00 ワツシヤー 14.2X26X3
15 96100-62000-00 ベアリング,ラジアルボール 6200
1 L. クランクケースカバーはCC110と色違い
2 11346-KTR-940 クランパーA,オイルテンプセンサーコード
7 91308-KVR-C00 Oリング 13.8X2.5
9 94301-08140 ノツクピン 8X14
11 96001-06035-00 ボルト,フランジ 6X35
1 13000-K1M-K10 クランクシヤフトCOMP
6 13325-K26-G80 プレート,クランクパルサー
10 91001-K1M-T01 ベアリング,R.ラジアルボール スペシヤル 62/28(フジコシ)
91001-K1M-T02 ベアリング,R.ラジアルボール スペシヤル 62/28(NTN)
3 24241-K1M-T00 シヤフト,ギヤーシフトフオーク
5 24410-K1M-T00 プレートCOMP.,シフトドラムストツパー
7 24430-K1M-T00 ストツパーCOMP.,ギヤーシフトドラム
8 24435-K1M-T00 スプリング,シフトドラムストツパー
9 24610-K1M-T00 スピンドルCOMP.,ギヤーシフト
10 24630-K1M-T00 アームCOMP.,ギヤーシフト
11 24641-K1M-T00 スプリング,ギヤーシフトアーム
12 24651-KPH-900 スプリング,ギヤーシフトリターン ※JA55
13 24652-KPH-900 ピン,シフトリターンスプリンク ※JA55
15 35752-KPH-900 スプリング,チエンジスイツチコンタクト ※JA55
18 96220-30085 ローラー 3X8.5 ※JA55
19 96600-06016-00 ボルト,ソケツト 6X16 ※JA55
2 28215-K1M-T00 プレート,キツクストツパー
3 28221-K1M-T00 ラチエツト,スターター
4 28223-K1M-T00 スプリング,ラチエツト
5 28251-K1M-T00 スピンドル,キツクスターター
6 28281-K1M-T00 スプリング,キツクリターン
7 28282-K1M-T00 カラー,キツクスプリング
8 90451-KGH-900 ワツシヤー,スペシヤル 14MM
9 90452-K1M-T00 ワツシヤー 16.2X23
10 95701-06016-00 ボルト,フランジ 6X16
エンジン仕様
ロングストローク化による出力の低下を避けるため、圧縮比を大幅に上げている圧縮比旧:9.3:1新:10.1:1※その割にセルモーターはスーパーカブ110用のままなので異音(悲鳴)を上げる物があった。最高出力旧:6.5kW[8.8ps]/7,000rpm新:6.7kW[9.1ps]/6,250rpm最大トルク旧:11Nm[1.1kgfm]4,500rpm新:11Nm[1.1kgfm]4,750rpm
排気量旧:124㏄新:123㏄
最高出力や出力特性に関してはマフラーやエアフィルターなどで容易に変わってしまうので気にする必要もない。
排ガス規制に対応する為、O2センサーから空燃比センサーに変更。
空燃比センサー採用で消費電力は増大する事から、発電量をJA55の190WからJA65では230Wに増量。
■アイドルエアコントロールバルブをスロットルボディと一体化
新型エンジンでは、アイドルエアコントロールバルブがスロットルボディと一体化して小型化とコストダウンを達成した。
20~22年モデルではアイドルエアコントロールバルブはスロットルボディに接続される独立した部品で、日本での部品価格は5,853円と手の中に納まるサイズながら高価なものだったのでコストダウンに大きく貢献している。
オイルフィルターの採用理由ロングストローク化によりピストン移動速度が高速になるので、油膜切れの不安があるが、ピストンオイルジェット方式を採用してピストンにオイルを吹き付けて冷却と潤滑効率を上げている。ピストンオイルジェットはジェットと名がつく事から判るが、ジェットの様な勢いで噴射させるには高い油圧を必要とする為、オイルの流路は非常に細くなる。この為、オイルにスラッジや金属粉などのゴミが混ざっていると目詰まりの他、ピストン/シリンダーの傷や摩耗の原因となり、エンジンには致命傷となるため、オイルフィルターの採用は必須となった。
オイルフィルター搭載をセールスポイントとして挙げていない理由。
また、細いオイル流路はオイル粘度が高いと流れ難くなるので100%鉱物油のオイルでは寒冷時には問題になる可能性がある為、新型エンジンが最初に搭載された21YMのグロム発表前に標準オイルであるHONDAのエンジンオイルG1が全面改良され、低温時の粘度が10Wから5Wへと低く下げられた理由の一つでもある。
1980~90年代のような性能向上を目指したモデルチェンジと違って、電動化に移行が進む現在ではそれまでの繋ぎとして年々強化される排ガス規制と環境性能に対応する為のモデルチェンジでありその結果、新型エンジンはデリケートになったと言える。
旧型のエンジンでは、昔ながらのオイルストレーナーだけで問題がなく、その信頼性とタフさは長い歴史と実績が証明している事と運用・整備・パーツといったノウハウも蓄積されており、オイルフィルターが無いからと言って気にする必要はない。
更につけ加えるなら新型エンジンは旧型と同じくオイルストレーナーも搭載されていることで、要するにオイルフィルターだけ交換していれば済む訳じゃないという事だ。
1次/2次減速比の変更
トランスミッションの各ギヤの変速比は変わらず、1次/2次減速比は変更され僅かながら高速化した事によりメーター上では100㎞を超える(グロムでは102㎞)。
1次/2次総減速比旧:9.329新:9.284
エンジンの軽量化新型エンジンではロングストローク化した事によってシリンダー周りが細くなり小型化した事と、クランクシャフトも軽量になり、旧型より約2Kgも軽量化している。
23YM・ハンターカブの装備重量が2Kg 軽量化したのはこの新型エンジンの軽量化によることが大きい。装備重量旧:120kg新:118kg
※出典:ホンダ 3代目グロム開発者インタビュー【エンジン編】「5速化でもっと楽しく、軽量化で走りも燃費も良く!」
JA55と比較した際、最もわかりやすい変更箇所で、剛性の確保とJA55より低くエンジン中央寄りに配置されたインジェクションの保護を兼ねる。
20~22’モデルには搭載不可
■サイドスタンドの地面設置部分の形状変更旧型のパイプを押しつぶしただけの地面接地部分から広めの板を溶接でつけた構造となった。
■センタースタンドの補強部分の形状変更
一枚板の補強からL字のアングル材で片面には緩くアールが付いた物に強化された。
■リアキャリア左側にオプション搭載用のねじ穴を追加(日本仕様のみ)
純正サイドケース等を搭載するためのステーを固定用とリアキャリアベース固定用の8㎜のネジ穴が追加されている
■メーターステーの変更
純正オプションのフロントキャリアを(純正ウィンドシールドのマウントも兼ねる)追加するにあたり、メーターステーはフロントキャリアの固定用ステーも兼ねることになり、メーターステーが大きく変わった。
また、固定用ボルトも変更された為、旧型に流用するにはトップブリッジも変更する必要がある。
61350-K2E-J10
■メーターステー固定用ボルトの変更
旧型6x14 新型8x14
■トップブリッジ変更
純正オプションにフロントキャリアとウインドシールドを追加するにあたってメーターステーの固定を強化するためにステー固定用ボルトのネジ穴が旧型6㎜から新型では8㎜に変更された。
■リア側面反射板の廃止(日本仕様のみ)
■キックペダルの形状変更
旧型では、派手に車体からはみ出てる見た目や、人によっては踵が引っ掛かったりして不評だったキックペダルは形状が変更された。
旧:28300-K2E-T00新:28300-K2E-J10 ※流用不可
■サスペンションユニットにプリロードアジャスタを搭載
プリロードを5段階にセッティング可能になった。
■シフトペダル形状変更
エンジンの変更に伴い従来の形状ではジェネレーターカバーに干渉してしまう為、エンジンに合わせて形状が変更された。
旧:24701-K2E-T00
新:24701-K2E-J10 ※流用不可
■ステップバー固定部分変更
新型エンジン用に固定部分が変更されているだけで、それ以外は変わらずステップも同じものが採用されている。
23年モデルのタイ仕様
■キャニスターの廃止
23年モデルのタイ仕様では、キャニスター(燃料蒸発ガス排出抑制装置)が無くなった。
燃料タンク内などから蒸発したガソリン蒸気を、外部に排出しないようにするためのシステムだが、アジア圏では小排気量二輪車の燃料蒸発ガスに対する規制がまだ緩い事もあってかバッサリと切り捨てられた。
まるごと無くなったキャニスターとその関連部品 |
図中の2番のキャニスターコンプは日本での部品価格は、¥3,179、図中10番のハ゛ルフ゛,ハ゜ーシ゛コントロールにおいては¥4,928と車両性能には全く関係がない割りに高価な部品で、これらを無くす事によるコストダウンは非常に大きい。
また、このキャニスターはキャニスター本体だけで少量版の缶コーヒー並みのサイズがあり、それに関するフレームのキャニスター固定用ステーとパイプ等の周辺部品が消える事による軽量化も大きい。
ボディ・左側メインフレームカバーの一部デザイン(形状)変更。
今回のモデルチェンジで唯一やっちまった感がある部分が左側メインフレームカバーの一部デザイン(形状)変更だ。
これは、エンジンが110CCとベースが共用化されたこと部品のコンパクト化等でシリンダーヘッドが小さくなった事で従来の形状では隙間が大きくなる都合によるもの 。
ヒューズボックスは住友電装 FUSE-6HL-MN-SWS-tr でどちらも同じだが、ヒューズ内容は大きく異なる。
JA55では、オーナーが自ら手を入れる可能性が高い部分や、転倒時に破損しやすいライト関係とアクセサリー電源ソケットは、独立したヒューズソケットを用意してアクセスしやすい配慮がされている。
JA65ではバックアップとメーターのヒューズが無くなり、全てヒューズボックス内に纏める事によってコストを削減している。
DLCコネクタの形状変更
OBD2の接続など、車両診断に使われるDLCコネクタ(旧称:サービスチェックカプラ)が二輪国内三次規制(平成28年)に伴うOBD対応によりISO準拠となり、赤色4Pカプラから赤色6Pカプラに形状が変更された。
これによりOBD2アダプタを接続する場合、キタコ等から販売されている従来のOBD2アダプタや電源取り出しアダプタ等は利用できなくなっているので購入には新型・初期型のどちらに対応した製品か確認が必要。
チェンジ検出スイッチの変更
初期型では接点がニュートラルの一点だけで、ニュートラル以外の検出ができなかったが新型では4速全ての接点が付いてカプラまでしっかりと装備されたものに変更されているのでシフトインジケータ―を導入する場合にチェンジ検出スイッチを別途用意する必要が無くなった。
その他
JA65=90132-MJW-J40スチール製で、44125-MN5-000のカラーを噛ませて固定される。
バックミラーの形状を変更。
WMTCモード燃費が63.7km/Lから66.9km/Lへと改善。(JA55では、2名乗車時で定地燃費値(60km/h):61.0Kmを誇っていた)
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