2024年3月8日金曜日

MAXWIN AlienRider M2PRO VANLINKS

VANLINKS株式会社(本社:東京都新宿区)は、クラウドファンディング大手Makuakeにて「バイク専用マルチスマートモニター」の先行予約販売を2月29日(木)より開始した。

MAXWINからも発売
同様の製品はMAXWINからも販売される。販売価格はフルセットで99000円
前後カメラのみのベーシックモデル等も販売する
コントロールスイッチ付属
MAXWIN M2PRO タイヤ空気圧センサー 前後2カメラ:¥82,500 税込 amazon
コントロールスイッチ付属

空気圧センサー、レーダーユニット等も単品で発売されるので、予算の都合や必要な機能に絞った構成で組む事も出来る。




Alieexpressでは既に発売中
中国:Alieexpressでは、3月15日時点で既に販売されており、価格はフルセットで50,830円+送料3,036円となっている。
当然だが、中身が同じでも日本の技適等の認証シールは無い

製品素性
このモデルは、「Apple CarPlayまたはAndroid Autoによるスマートフォンとのワイヤレス連携」「高解像度のドライブレコーダー」「タイヤ空気圧監視システム」といった、定番の機能の他に「77GHzミリ波レーダーによる安全走行支援システム」という後方から接近する物体の検知が可能な機能を装備しているのが特徴。
特徴
最大のポイントは77GHzミリ波レーダーによる物体検出が可能なことで、後方55メートルまで、同時に検出できる物体の数は最大32個で速度や距離を高精度で検出できるという物。
これにより高精度の死角検出(BSD)、並列補助アプローチ早期警報(LCA)、後突警報機能(RCW)の機能が可能となった。

知っておくべき事
VANLINKS及びMAXWINの現在の販売価格が99,000円と強気の設定をしているが、アメリカでの価格は500ドルを切っている事、Alieexpressでは一時、4万9千967円と5万円を切っていた事から、日本での販売価格は5~6万円台が妥当だろうが、バイク人口が減少の一途を続ける日本では見込める販売台数が年間数百台と言ったところなので日本の技適を受ける為のコストアップでこんな価格になってしまう。

この価格設定から機能も完全装備と思ってしまうが、意外な事にGPSが非搭載の為、位置情報、車速、方位と言った情報を得るにはスマートフォンが必須で、Apple CarPlayまたはAndroid Autoによるスーマトフォンとのワイヤレス接続機能を除くと、ドライブレコーダー、レーダー、タイヤ空気圧の3種類の機能しか搭載いていない事からスマートフォンに極端に依存した内容となっており、単体だけではGPSを利用したHUD的な画面等は存在せず、ただメニュー項目が並んでいるだけの味気ないホーム画面又はドライブレコーダーのカメラ映像にレーダーの接近警報、タイヤ空気圧の数値が表示されるだけとなるので、価格の割りに製品の訴求力に乏しい。

モニター側にGPSが無くても実使用では影響がないのだが、GPSを利用したHUD的な画面が有ると無いとでは、初めてスマートモニターを使う場合に与える感動が大きく違う。
SFやアニメの様な未来的画面が実働する現実として目の前にある感動が得られないのは残念な点だろう

本体のホーム画面
本製品の胆は77GHzミリ波レーダーによるブラインドスポットモニター(BSM)にあり、それ以外はGPS非搭載など他の製品より機能搭載数は劣り、BSM機能が本体のような製品である。

売りとなっているミリ波レーダーによる物体検出は、同時に検出できる物体の数は最大32個で速度や距離を高精度で検出できるとしているが、その機能を利用したアプリケーションなどは搭載されておらず、物体が接近した時に画面に淡々とアラートが表示されるだけで、せっかくの装備がアラートだけしか生かされていないのも残念な点だ。

まだ発売されていない事と、アップデートも可能な事からGPS関連以外は改善される可能性に期待したい

信頼性
気になる信頼性についてだが、VANLINKSが販売する物はMRAによる工事設計認証を受けており日本の技適も認証されている。

一方、MAXWINが販売する物はTELEC認証となっている。
TELEC認証とは、無線設備の認証・試験機関であるTELEC財団法人「テレコムエンジニアリングセンター」の略称で、総務大臣から指定証明機関としての指定を受け「電波法に基づいた基準認証制度」に基づいた技術基準適合証明を行っている。
MAXWINが販売する物は、このTELECで技術基準適合証明を受けているが、VANLINKS
物は工事設計認証と言う違いがある(審査料も一桁跳ね上がる)。
違いは、技術基準適合証明では、完成品を1台ずつ電波法の技術基準に適合しているかどうか審査・試験するのに対し、工事設計認証では無線設備の設計や製造段階などにおける品質管理等が電波法の技術基準に適合しているかどうか審査・試験を行い、以降生産される同一製品に際して永続的に電波法認証が与えられる。
どちらの技適を受けるかは、どれくらい生産(販売)するかで判断する事になるが、一般的に少数の製造(販売)を見込んでいるなら技術基準適合証明、大量に生産(販売)するなら工事設計認証が選ばれる。

TELEC認証の技術基準適合証明の参考料金(5GHz 帯小電力データ通信システム)の一部を例として挙げる。
申込の基本料(新規)36,000円
1台目の試験手数料 38,000円
2台目以降の試験手数料 28,000円
1台あたりの試験結果審査手数料 3,400円
10万円近くの販売価格になるのも納得のコストが掛かるのがお判りいただけただろうか?
自動車向けの様に年間数千台規模で販売が見込めるのなら工事設計認証で試験コスト分の上乗せをゼロに近づけられるが、日本ではバイクの需要は下がる一方で、見込める需要は年間数百台規模が精一杯という訳で試験コスト分は上乗せざるを得ないのある(涙)。

VANLINKSが採用している工事設計認証を受けるには、生産工場の品質管理体制の情報も必要になる為、ISO9001の提出または認証機関が用意するフォーマットを準備する必要がある事から一定の品質が担保される

設計、生産中国: Shenzhen ATS Electronics Technology Co., Ltd. 
プロダクトネーム:Motorcycle riding system  
モデル型番:M2A又は,M2PRO 
販売ブランドネーム:AlienRider

電気通信適合性評価手続
FCC Identifier: 2BEJUM2
 申請人の署名:Zhishun Zhang
 認証機関名:LGAI Technological Center, S.A. (APPLUS)
 承認日:2024年2月6日
 相互承認協定(MRA)により以下の日本における技術基準適合証明が承認される:
 総務省 技術基準適合承認番号220-JP7044
 承認日:令和6年2月6日
  第2条第19号に規定する特定無線設備(2GHz)
  第2条第19号の3に規定する特定無線設備(5GHz)本機の電波型式,周波数はW56
DFSは日、欧、米 でW56は義務化されているので認可された時点でクリアしている。
屋内においてのみ利用可能な場合は、屋内においてのみ可能である旨の表示が記載される。

https://giteki.lang-ship.com/220-JP7044

製品仕様

サイズモニター本体(W)154mm×(D)26mm×(H)82mm (突起物除く)
画面6.1インチフルカラーIPS液晶(解像度:1440×720p、輝度:1000nits 代表値)
重量モニター本体約390g
配線電源ハーネス約300cm
コントロールスイッチ約150cm
フロントカメラ約200cm
リアカメラ約350cm
レーダーユニット約350cm
防塵・防水性能IP67相当(本体・フロントカメラ・リアカメラ・コントロールスイッチ
・タイヤ空気圧センサー・レーダーユニット)
BluetoothVer.4.0
Wi-Fi2.4Ghz/5.6Ghz(DFS)
動作電圧DC12V
動作温度-10℃~+60℃
保存温度-20℃~+60℃
記録媒体microSDカード(別売) ※32GB~256GB対応 UHSスピードクラス3以上
カメライメージセンサーSONY 2.0M IMX307 CMOSセンサー STARVIS技術搭載
解像度FullHD(1920×1080)/HD(1280×720) ※フロントカメラ/リヤカメラ共通設定
レンズ画角対角120°
F値F.NO≧1.8
画像補正HDR
フレームレート27.5fps ※LED信号機が消灯状態で記録されないように調整済み
記録方式常時録画/イベント記録/手動録画
常時録画時間(1ファイルあたり)1分間/3分間/5分間
音声記録○(オン/オフ可)
ファイル方式動画:TS/静止画:JPG
記録映像再生方法○本体液晶
○スマートフォン専用アプリ
システム要件Carplay:iPhone8/iOS13以降
Android auto:Android11以降




競合製品
VANLINKSのバイク専用マルチスマートモニター ※以降、製品名が長いのでM2PROと表記
と、技適認証を受けている製品で競合する製品は、タナックスの AIO-5 Lite や、カエディアの KDR-D21 がある。

M2PROAIO-5 Lite 
どちらのモデルも高価格な割りに意外な機能が付いていないという欠点がある。
まず、先行するAIO-5 Liteだが、8万円台と高価でありながら空気圧センサーが別売りなのが痛い。
本体上部にはボタンによる操作が出来るホットキーが付いているが走行中の操作は安全上好ましくないので基本的に停車時のみ利用する事になってしまい使い勝手は良くないのだが、これまたオプションでワイヤレスリモコンによる手元操作も可能となる。
空気圧センサーとリモコンを追加すると総額10万越えと言う事でかなり高額になってしまう

amazon TANAX SRS-001 スマートライドモニターAIO-5Lite

対して、M2PROではドライブ状況表示には有益な情報を提供できるGPSが搭載されていないというこの手の製品としては首をかしげたくなる仕様で、せめてオプションでもいいから追加できればいいのだが追加も出来ないのは残念だ。
本体にはボタンやスイッチは装備されていない代わりに有線のリモコンが付属するので実質ホットキーが付いているのと変わらず、配線と言う負の部分があるものの手元で操作が可能で、電池の心配がなく信頼性が高い。
その他、詳細なスペック表が無いことから、キャパシタの有無、内蔵スピーカーの有無等がはっきりしていない等、使ってみるまで判らない不安点も多い。

KDR-D21 
BSD(後方検知機能)こそ無いものの、価格面で圧倒するのはカエディアの KDR-D21 
BSD後方視覚監視システム(映像認識)はオプション予定※ミラー一体型BSD警告灯を企画中
M2PROは、この記事の作成時点では販売されていないのでスペックでしか比較できないが、KDR-D21の機能自体は性能はともかくオプション予定も含めるとM2PROAIO-5 Liteと遜色がない、グローブをしたままのタッチ操作が困難な事、直射日光下の視認性の悪さ、液晶が4.5インチと小さく多少見難い事を考慮しても価格を考えれば納得できる物だろう。
amazon Kaedear KDR-D21 スマートレコードディスプレイ

オプションを含めた状態で3機種を単純に比較すると、AIO-5 Lite のコストパフォーマンスが悪すぎて真っ先に選択肢から消えるが、購入後のサポートや安心感ではタナックスが販売しているAIO-5 Lite か、カエディアのKDR-D21 が最もお勧めできる事は確かである。

特にカエディアのKDR-D21の価格が44000円に対してVANLINKSのM2PROは予価99000円と価格差は倍以上もあり(VANLINKS以外だと輸入で5~6万円台)、後方監視機能が無い事以外は機能的に遜色がない事を考えればバーゲンプライスのような物で、更に加えると技術基準適合承認を自社で行っている事から、製品にも精通しているとみられ、予算的に厳しい場合はサポート能力も期待できるKDR-D21が多少の使い難さがあっても価格で納得できてしまうので、購入予算が限られるのであれば2024年3月の現状では選択肢はKDR-D21しかない

M2PROは、初物だけに価格よりも製品/企業共に実績がない事が最大の問題で、予約して購入する場合、お金をドブに捨てる覚悟が必要だろう。
VANLINKSMAXWINのどちらかを選ぶかと言えば、サポート体制はどっちも不安だが、バイク・カー用品で長い販売実績がありユーザー登録で1年保証に更に1年の延長保証があるMAXWINが販売体制も充実していて安心だろう。


NikoMaku のSM-1、SM-2(製造:Dongguan Xiangxing Network Co., Ltd.)
KDR-D21よりも、技適認証を受けていながら、空気圧センサーは別売り(販売している様子はないが)の安価な「NikoMakuSM-1シリーズ(ASIN: B0CCVNR563)又はSM-2があるが、この製品は技適認証の特定無線設備の種別が「5.2, 5.3GHz帯小電力データ通信システム」と、ここまではいいのだが、使用する電波の周波数が、5.2, 5.3GHz帯で5.6GHz帯は含まれておらず、屋外での利用には自動車内でのみ利用に限定される為、候補にすら入らない。

総務省資料

販売、購入するのは何ら問題ないが、NikoMaku SM-1等バイクで使用すると法律自警団の格好の餌食となってしまう場合があるので、この製品を搭載した車両を屋外で撮影してyuotubeやSNS等で発信するのは避けるのが賢明だ。

また、将来的に5.2GHz帯の屋外利用等の台数が増加し、衛星システムへの影響のおそれがある場合は、新規の屋外利用等の登録の受付停止や、既に屋外利用等を運用されている機器に対し運用を制限する可能性があると、電波法第76条の2の2で定めてあるので注意が必要だろう。
5.2GHz帯では野外でのテザリングも不可

NikoMaku SM-1と同じ製品で技適認証を受けていない製品が更に安価で多数Amazon等で販売されているが、コピー品でもなんでもなくOEM品なので全く同じである。
価格差は組み合わせるカメラや空気圧センサーの有無によるもの。
特にカメラに関しては外観からは見分けがつかない事からソニー製と謳いながら実はノーブランドだったりする場合もあるので安心して買えたものではない。

市場で売られている2万~3万円台の安価な製品は上記の様に自動車用の5.2, 5.3GHz帯の製品をそのまま転用する事によって低価格を実現しているからで、バイクの様に屋外で利用するには日欧米ともに5.6GHz帯(W56)DFSの搭載が必須となり、更に技適認証も必要となるとこれらだけでもかなりのコストアップになるのは避けられないのだ。

製品品質
どのメーカーの製品であろうと国際的な電気通信適合性評価手続が出来る程の企業であれば、品質の心配は無用である。
自社の発展と言う明確な意思を持って動いているので、設計思想や諸事情による妥協などで欠点や不具合が出る事はあっても、粗悪な製品は作らない。
問題となるのは輸入品である為、販売する側のサポート体制と能力だろう。


スマートモニターを導入する際の問題点
まず、利用するスマートフォンが iPhone か android で使用感が大きく異なる事に注意。

iPhone の場合、スマートモニターとの接続は2.4GHzを利用するが、android ではAndroid 11 以降は5GHzを使用すると言う違いがあり、問題なのはAndroid 11 以降の「スマートモニターとの接続には5GHzを使用する仕様」だ。
5.6GHz帯にはDFSが搭載されている為に電波干渉を起こす気象レーダーなどがないかを最低でも1分間確認し、電波干渉を起こさないチャンネルを使って接続するという儀式があるので、スマートモニターとの接続には最低でも1分は必要となる。

スマートモニターと一度接続してしまえば、以降そのまま継続され続けるかと思うかもしれないが、そうは問屋が卸さない。
使用中でも電波の干渉を検知すると、通信を自動的に停止して、他の干渉を与えないチャネルに変更する為、1分以上通信が途切れる事になるので特にナビを利用する場合は場所とタイミングによってはスマートモニターが役に立たないと言う欠点がある。
また、機種によっては通信が途切れてしまうと自動で復帰する事ができないモデルがあったりといった、スマートモニターとの相性問題というandroid端末ならではの問題もあるので悩ましいところだ。
特に日本のNTTドコモ、au、ソフトバンクと言った大手キャリアが販売するandroidスーマートフォンでは独自にカスタムされている場合が殆どで、まともに認識すらしないものもあり、スマートモニターとの相性はあまりよろしくない。

このDFS問題を回避する為に、 利用するスマートフォンにはiPhoneがお勧めとされる。
ただし、android でも機種によっては5GHzをオフにして2.4GHzで通信してもスマートモニターと接続が可能な場合もあるようだが条件が不確定すぎて話にならない。

youtuberにスマートモニターを提供し、プロモーションも兼ねるレビュー動画等では、android でも接続が速いと言った場合、提供されたスマートモニターのDFSがオフになっている事も考えられるので、提供レビューを鵜吞みにするのは禁物だ。

実使用においては、スマートフォン上では動作するアプリの機能がスマートモニター上では反映されないと言った制限もアプリによっては存在し、スマートフォンを完全に反映出来る訳ではない事も注意が必要だ

最後に意外と致命的なのがスマートフォンの充電問題だ。
スマートフォンをスマートモニターでナビゲーションとして利用する場合、地図アプリ/Bluetooth/Wi-Fi/GPS/データ通信とフル稼働状態になるので発熱もさることながらバッテリー消費も半端ない事になるのでモバイルバッテリーを携帯するか、スマートフォンをタンクバック等か、バイクの適当なところにスマートフォンを固定して車両から給電するという本末転倒な選択を迫られるだろう。

ナビゲーションに依存しているような走行をしている場合、スマートモニターを使うと余計面倒な事になるのでナビゲーションが手放せないなら購入はよく考える必要がある。

スマートモニターのセールスポイントとして挙げられるスマートフォンの画面表示だが、実際は機能制限や充電問題のおかげで単なる付加機能に過ぎず、がっかりするかもしれない。
安全を支援する数々の装備を一つに纏められる事が唯一のメリットで、それが如何に洗練されて搭載されているかが購入の決め手となる製品だろう。


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